Limaoの中国裏事情ブログ

早稲田大学卒業、東洋大学大学院中退、2015年中国は湖北省の武漢大学に語学留学、2016年現地企業のサラリーマンを経て帰国。その後はフリーランスの日中翻訳者として東京を拠点にタイや台湾などでノマドワーカーしてます。 日本にいてはなかなか分からない中国大陸や台湾、香港などの実際のありさまをレポートします。中国語や台湾語の学習情報も更新していく予定。乞うご期待!

コロナウィルスの猛威と中国の現状

コロナウィルスは現在中国で猛威を奮っており、この記事を書いている段階(2020年2月18日)で中国本土では7万人近くが感染しており、日本でも300人近い感染者が確認されております。特に感染の状況が酷く、封城(feng1cheng2、都市封鎖)されているのは湖北省を中心とした地域ですが、北京、上海、深センといった中国の大都市でも感染が広まっており、現地では警戒感が強まっています。

わたしは翻訳以外にも普段オンラインで中国の学生に日本語を教えるなどの仕事もしており、今封鎖地域を始めとする中国各地にいる学生と連絡し、その状況を直接耳にしています。それによると、日本と比べて現地の空気は深刻さを増しているそうです。

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封鎖された北京のマンションの一室

現地の人は感染を恐れて一歩も外を出歩かない状況であり、地域によってはスーパーでの買い物も数日に一度家族の代表者一人が買い物ができるという状況のようです。

中国の会社も社員に自宅待機と在宅での勤務を命じているところが多いようです。今回のウィルス大感染が春節(chun1jie2、旧正月)と重なったため、多くの労働者が地元に帰っています。普段は、中国の経済の中心地である北京、上海、深センなどで働き、旧正月にはそこから何千キロも離れた故郷に帰る労働者が多い中、政府も感染の拡大を恐れて、これら労働者がまた大都市に戻るのを抑制するように働きかけています。

自宅のパソコンで事務仕事などを済ませ、インターネットで仕事の成果と報告を会社に送るという在宅勤務の体制が中国の経済界で急速に広まりつつあります。業種によっては無理に出勤せずとも在宅勤務が可能なので、これは今後中国人の働き方自体を変えてしまうかもしれません。一方で、工場や建築現場など在宅での勤務が不可能な業種ではこのような働き方は適応できず、休業を余儀なくされています。しかし会社の経営者の側は労働者に落ち度がない以上勤務しなくても給料を払い続けなければならず、そのためすでに倒産してしまった中小零細企業が何百社もあると言います。

ただでさえ、米中貿易戦争などで中国経済が悪化する中、今回のコロナウィルス問題が中国経済に与える影響は深刻です。また日本でも消費税増税以降景気は低迷しており、追い打ちをかけるように今回の騒動が起きています。もし東京オリンピックがこのせいで中止になるようならその経済に与える影響は甚大なものとなるでしょう。

なお、香港で長らく問題になっていた反政府デモですが、香港にいる学生に聞いた話によれば、最近のウィルス流行のためデモ隊が外を出歩くのを恐れ、最近ではすっかりなりを潜めているそうです。ウィルス問題の思わぬ副作用だと言えます。

最後に、明るい話を一つしましょう。私の親友で以前東京で5年間留学生活を送り、今は北京にある日系企業で働いている20代の青年がいます。彼は春節湖北省の地方都市の実家に帰ったまま、街が封鎖され、北京の本社からは自宅待機と自宅での勤務を命じられている状況です。

彼は自分の育った街がウィルスに曝されている現状を看過できず、私費を投じてマスク数百枚を購入し、故郷の街の病院に寄付したとのことです。日本では中国人のエゴイスティックな行動やマナーの悪い振る舞いがメディアで強調されがちですが、彼のような中国人の青年がいることは特筆されるべきでしょう。中国人は一般に愛郷精神が強く、自分の生まれ育った街や村を誇りに思っています。その思いがより広がり国全体、そして日中友好にまで広がることを祈ります。