Limaoの中国裏事情ブログ

早稲田大学卒業、東洋大学大学院中退、2015年中国は湖北省の武漢大学に語学留学、2016年現地企業のサラリーマンを経て帰国。その後はフリーランスの日中翻訳者として東京を拠点にタイや台湾などでノマドワーカーしてます。 日本にいてはなかなか分からない中国大陸や台湾、香港などの実際のありさまをレポートします。中国語や台湾語の学習情報も更新していく予定。乞うご期待!

润という新しい動き

润という言葉をご存知でしょうか?

たぶん日本国内の中国語学習者は、こんな用法は習ったことがないと思いますが、身近な中国人(若い世代)をつかまえて質問すると、みなニヤリとするはずです。

実は、润 run4 は、発音や拼音が英語のrun 走る に似ており、中国語の走る 跑 pao3 には、他に「逃げる、逃げ出す」という意味があることから、移民などの手段で国外へ脱出するという意味なのです。このように表記に全て漢字を使う中国語では、俗語・ネットスラングには漢字に新しい意味を与えたり、一部ローマ字を使ったりします。

この他に、例えば 喝茶 お茶を飲む という表現も日常会話以外のネットスラングとしての用法で、「警察に(思想的な理由で)捕まる」という意味を表します。日本語で言えば、「カツ丼を食う」でしょうか?

今回のコロナウイルスによるパンデミックと、それに伴う国家の厳しい統制とロックダウン、さらには以前紹介した激しい競争社会「内卷 nei4juan3」などで嫌気が差し、海外移住、わけても日本移民を希望する中国人が急増しています。彼らがなぜ日本を目指すかというと、欧米諸国に比べて中国人に対する人種差別やヘイトクライムが少なく、文化的にもよく似たアジアの先進国として、日本が移民先にふさわしいと考えているからです。

一見すると反日的だと思われがちですが、中国人の若い世代は日本に対する感情が屈折していて、「所詮はアメリカの属国」と見下す反面、アニメなどサブカルの聖地としていたく憧れてもいて、それに対しアメリカに対する敵愾心と愛国心が高まる一方です。中国青年の中にはいっしょに中国の敵であるアメリカに対して立ち上がって欲しいというものさえいるようです。私が以前いっしょに食事などをして懇意にしていたある中国人の若者は、日本の文化水準と先進国ぶりを高く評価しながら、「アングロ・サクソンは人類の敵だ」などと吐き捨てておりました。

筆者はこのような流れ自体には反対です。日本を高く評価してくれるのはありがたいにせよ、アメリカ憎しは結局攻撃対象を日本からアメリカなど欧米諸国に代えただけのヘイトに過ぎないからです。

いずれにせよ、日本は人口の少子高齢化から移民社会は避けられないありさまであり、既にベトナム人やネパール人労働者の力を借りなければ社会が回転していけないのが現状です。中国人は教育を重視し、高度人材になろうとする意欲が強く、ITなどで起業している中国人も日本では増えてきています。今後多様化する日本社会の中で中国系移民が大きな活力となってくれるのを期待します。