Limaoの中国裏事情ブログ

早稲田大学卒業、東洋大学大学院中退、2015年中国は湖北省の武漢大学に語学留学、2016年現地企業のサラリーマンを経て帰国。その後はフリーランスの日中翻訳者として東京を拠点にタイや台湾などでノマドワーカーしてます。 日本にいてはなかなか分からない中国大陸や台湾、香港などの実際のありさまをレポートします。中国語や台湾語の学習情報も更新していく予定。乞うご期待!

中国古典の何が魅力的なのか?

孫子



 

先日、高田馬場の美容院に行ったとき、美容師さんから、なんでそんなに中国が好きなのかと聞かれたので、「中国の古典が好きだからだ」と答えたところ、「うちの社長も韓非子を読んでいる」と聞かされました。話を合わせてくれたんでしょうが、韓非子が好きとは多分ワンマン社長だなと思いました。それはさておき、確かに韓非子は古典としての価値が高い書物です。

これは一言で言えば、人間不信の哲学です。「飴と鞭で他人を支配せよ」みたいなことが書かれています。

 

ただ、韓非子は、他の諸子百家の書物が多くそうであるように、多くの人間による編集や加筆を経て成立しています。今で言えばWikipediaのようなものです。もちろん韓非自身の手になる名文も含まれていますが、どうでも良い文章も大量に混ざっていて、さらに全部で55篇もある大部な書物なのでいきなり全文を当たるのはやめたほうが良いでしょう。

一応、岩波文庫から全4冊で全文の翻訳が出ていますが、訳者が学者でこなれない日本語なのと、全文を当たる困難さから初学者にはおすすめしません。

一方で、徳間書店から諸子百家の各作品の抄訳が出ており、こちらはコンパクトに纏まって訳文も読みやすいのでおすすめです。さらに台湾で出版された漫画版も出ています。こっちもかなり面白いです。

 

 

 

 

個人的には「孫子」の兵法もおすすめです。こちらは戦争に勝つ方法が説かれていますが、個人のケンカにも応用できます。

非常に合理的な思想で書かれているので、現代の読者にも理解しやすいはずです。こちらは岩波文庫版と講談社学術文庫版がありますが、講談社学術文庫の方は訳者の主観や自己主張がかなりウザいので、岩波文庫版の方をおすすめします。

孫子」はそんなに難しい漢文ではないので、慣れてくると白文でも読めます。むしろ原文がややあっさりし過ぎているので、註釈が欲しくなります。

wikisourceで十一家註孫子が読めるので、漢文に自信がある人は挑戦してみて下さい。

十一家注孫子 - 维基文库,自由的图书馆

 

 

さて、なぜ中国の古典が魅力的かというと、それがノウハウの蓄積だからです。

その美容師さんも、美容師としての仕事や店の経営、ライバル店に勝つ方法など、その業界独自のノウハウがあるはずです。では、それを文章にして発表したり、本にして出版しているかと言うと、していないようです。日本人は優れたノウハウがありながら、文字化するのは苦手なんですね。

一方中国は文字の国です。春秋戦国時代の数百年で最大のノウハウは政治・軍事・外交でしょう。それらのノウハウを記録として残したものが諸子百家の古典です。そこには人間社会の普遍的な法則が秘められています。

 

もちろん、古典を古典としてそのまま読むのが一番自然なのでしょうが、経営者や起業家がビジネスの観点から研究してみても有益です。特に孫子韓非子がそうです。皆さんも是非一読してみて下さい。中国の文明の偉大さが実感できると思います。