現在(2019年10月時点)、香港における民主化デモは収まる気配がなく、今後の動静が案じられています。このデモは日本では刑法犯の大陸への引き渡し条例に抗議するものと報じられていますが、私の今回のデモに関する理解はこれと異なります。
私は、今回のデモは現地住民の大陸出身者に対する反感や反中国感情がきっかけとなり、また火に油を注いでいるものとみています。
私は一昨年(2017年)のクリスマスシーズン、香港・マカオへ初めての旅行に出かけたのですが、そこで経験した現地の雰囲気は中国大陸とは大きく違うものでした。
前のブログでも書きましたが、香港・マカオでは主に広東語が話されており、中国語(普通话)は中国大陸から来た旅行者や出稼ぎ労働者しか使いません。中国大陸と香港は鉄道で結ばれていますが、鉄道の途中に税関に相当する検問があり、一国二制度のもと、外国人は再入国という形で通過しなければなりません。香港のすぐ向かいは広東省の珠海ですが、目と鼻の先にありながら一般の中国人は直接香港に行くことができず、政府に許可証を申請しないといけません。これには財産審査があり、お金持ちしか香港・マカオに行けないのが現状です。現在では、中国大陸から大量の旅行客が香港・マカオに出かけていますが、彼らはマナーが悪いので有名で、現地人には非常に嫌われています。
私が中国に留学していた時、中国大陸では日本人だと知られてあまり良いことはないので、どこでも中国語で通していましたが、現地の人は基本広東語で生活しており、この広東語といわゆる中国語とは英語とドイツ語くらい異なっています。現地の人にも中国語は一応通じるものの、香港人はこれがあまり上手ではありません。そして何より、中国人の旅行者のマナーが悪いので、中国語でしゃべると中国人と見なされて冷遇される恐れがあります。
例えば買い物をする時でも、中国大陸の観光客は店員さんに大声で怒鳴るように話しかけます。これは中国大陸ではサービス業の従業員の態度が非常に悪く、仕事をする気がないので、怒鳴らないと買い物一つできない事情からくる習慣ですが、香港人からは顰蹙を買っています。食事をしていると、中国人の旅行客がスマホを充電するために勝手にお店のコンセントを使用しようとして怒られたりしてます。マカオで屋台をやっている家族と友人になって話したことがあるのですが、「中国人は嫌いだ、いっしょにされたくない」と言っていました。
香港に来たばかりの頃、安いユースホテルに泊まったのですが、中国語でしゃべっていたせいか受付にすごくそっけない態度を取られ(外国人向けのユースホテルで、中国人の旅行客も多い)、こっちが重い荷物を背負ったままなのに無視して10分くらい長電話をされました。受付の香港人の兄ちゃんは電話を終えると、面倒臭そうに
「通行証は?」
「通行証ってなんだよ?」
「おまえら中国人はみんな通行証持ってるだろ」
「俺はそんなもん持っていない」
「じゃお前はどこから来たんだ?」
「俺は日本から来た」
「え、日本人がなんでそんなに中国語が上手なんだ?」
「操!(ファック)日本人が中国語上手で悪いか! (#゚Д゚)ゴルァ!!」
……とまあ、こんな感じでやっとチェックインできました。
こういうふうに言葉を始め香港人は自分たちのアイデンティティを持っており、自分たちが中国人だという意識は全然ありません。それどころか、中国から来た人間をとても嫌っています。
今回の香港のデモが長期化していることには、政治的な原因よりも、そういった現地人の中国大陸出身者に対する素朴な反感が主要な原因ではないかと個人的にはみています。