Limaoの中国裏事情ブログ

早稲田大学卒業、東洋大学大学院中退、2015年中国は湖北省の武漢大学に語学留学、2016年現地企業のサラリーマンを経て帰国。その後はフリーランスの日中翻訳者として東京を拠点にタイや台湾などでノマドワーカーしてます。 日本にいてはなかなか分からない中国大陸や台湾、香港などの実際のありさまをレポートします。中国語や台湾語の学習情報も更新していく予定。乞うご期待!

読後ノート「『中国』の形成」(岡本隆司)

 

「中国」の形成 現代への展望 シリーズ 中国の歴史 (岩波新書) https://www.amazon.co.jp/dp/B08YJCQHPD?ref_=cm_sw_r_apin_dp_WWK2FPVF4M44F99NMMBR

この本で著者が分析・主張している大体の内容は、「元々さまざまな民族、文化がゆるやかに連合して一つの政治体を構築していたのが中国の歴史的特色であり、異民族王朝たる清朝の歴史的使命だった、が近代に入り欧米帝国主義による分割の危機に直面した中国人エリートが選択した近代化の方式は多元をそのまま一元にし、一つのネーションステートに統合するというやり方で、それが現代中国のさまざまな問題にそのまま直結している」、とまあそんなところであろう。

それに対して、私が中国のネットで一貫して主張してきたのは多元を一元として緩やかに統合するモデル(所謂中華民族)にこそ近代ネーションステートの限界を克服できる可能性が含まれており、欧米のグローバル資本主義、間接民主主義、キリスト教文明からなるモデルに対抗できるのは、唯一中国文明圏の統合と再確立であり、日本、朝鮮半島ベトナムなども含めた「大きなひとつの中国」だというものであった。わたし個人は“人类皆为同胞”の観点から徒にアメリカを敵視する中国の一部愛国派とは意見を異にするが、中国(漢字)文明を通じた諸民族の連合体こそ欧米に対抗する世界の一大勢力であり、のみならず、グローバリズムの限界を打破して新しい人類史を開く契機になると信じている。

中国に行ってみてすぐ気づくのは、中国人=漢民族ではなく、漢民族の間も多様な差異があり、さまざまな民族が平等な立場で共存しており、普通话という共通の言語と、それだけで一つの世界を構成するインターネット・プラットフォーム、共通の通貨と経済体制で密接にリンクされていることだ。辺縁部としての香港・マカオもこれとは大きく異ならないし、チベットウイグルなどの民族問題はそもそもが政治問題であって、政治的民主化の問題も含めて世界システムとしての中国とは元来無縁である。

我々日本人は、いたずらな排外主義に走る前に中国という世界システムのもつ世界史的意義を考え直す必要があろう。